ニュース 商業・サービス 作成日:2013年4月23日_記事番号:T00043257
台湾や海外からの旅行者に対し、ホテルの客室係やドアマンなどに1回50台湾元(約170円)以上のチップを渡すよう、交通部観光局が旅行会社やガイドを通じて呼び掛けを始めた。初めての公的なチップ普及促進だ。23日付蘋果日報の試算によると、全面実施で現場のサービス業従事者6,000人余りの収入が実質4%以上増える。一方消費者からは、10%などのサービス料を徴収していれば二重取りされるに等しいと不満の声も上がった。
行政院観光発展推動委員会は先日、チップを渡すよう観光局から呼び掛けることを決議した。これを受けて観光局が旅行商業同業公会全国聯合会(旅行業全聯会)や観光導遊(ガイド)協会など業界団体と話し合い、ソフトな行政指導を行うことに決めた。義務付けではなく普及促進の手法を採り、現場で働くサービス業従事者にとってチップは励みになることを旅行者に認識させる考えだ。
4%の収入増
観光局は、チップ制度によって、現場で働くサービス業従事者の収入を増やし、サービスの質を向上させられると導入の目的を説明した。
行政院労工委員会(労委会)の統計によると、ホテル・サービス業の現場で働く労働者は6,000人余りで、平均月給は2万3,000元だ。5つ星ホテルの試算によると、客室160室余りで1日1室50元のチップがあれば1カ月で24万元となり、客室係220人で分けても1人1,000元以上得られる。
ホテルで10年以上働く蔡さんは、チップをくれるのは欧米からの旅行者が多く大体100元だと話した。ただ、ホテルの決まりで全員で分け合うため、自分が頑張った分だけチップがもらえるわけでないと指摘した。
あるホテル関係者は、サービス料だけでなくチップまで取れば利用者の反発が予想され、チップ制度普及に政府が力を費やすよりも最低賃金を引き上げた方が手っ取り早いと漏らした。
台湾旅行好きの張さんは、ホテルでもレストランでもサービス料がかかるのに、チップも払わされるなんて二重取りだと批判した。また、海外旅行での1米ドルまたは1ユーロ(約130円)のチップと比べ、50元は高過ぎると話した。
大手ホテルグループ、晶華麗晶酒店集団(FIHリージェントグループ)は、チップがあれば担当者の励みになるが、チップを渡さない宿泊者でも同様に扱うと説明した。台北市の高級ホテル、西華飯店(シャーウッド台北)も、チップの有無に関係なく、サービスに手を抜くことはないと強調した。
普及には時間必要
旅行会社大手の雄獅旅遊(ライオン・トラベル)は、台湾にはこれまでチップの習慣がなかったので、海外からの旅行者、特に中国人に広めるのに一定の時間がかかるとの見方だ。
ガイド歴22年の遊さんは、公的な明文規定がなければ、旅行者に要求しにくいと話した。
一方、ある旅行業者は、ガイドや運転手にとってチップは既に収入源の一部で、旅行会社によってはチップを渡すよう旅程表に注意書きを加えていると指摘した。
50元札が復活?
台湾で現在流通しているのは50元硬貨だ。観光局は硬貨では喜捨を渡すようでイメージが悪いとして、中央銀行(中銀)に対し50元紙幣の発行を再開するよう提言、中銀は「意見を尊重し参考にする」と回答した。ただ、中銀関係者は、50元が硬貨に変更されたのは1992年で「チップのために紙幣に戻すなんてあり得ない」と漏らした。
一方、円山大飯店(グランドホテル)の労働組合の張挙成理事長は、台湾で硬貨はこじきに恵む印象があるためチップにふさわしくなく、紙幣発行が望ましいと述べた。
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